風邪・インフルエンザの予防法

 このホームページを管理するにあたって、Googleのツールを使って検索表示順位などを時々チェックしているのですが、この間久しぶりに見てみたら11月中旬から急に順位が跳ね上がっていました。それまでは「鳥取市 小児科」で検索しても40〜80位くらいにしか表示されていなかったのが、突然10位くらいになっていたんです。特に心当たりが無かったのですが、よく考えるとインフルエンザについてのブログを更新した時期と重なっているようです。やはり病院のホームページということで何かしら医学的な内容を入れないと評価されないのでしょうか。
 ということで、今回は「風邪とインフルエンザの予防法」について書いてみます。最初は感染症の予防法にしようと思っていたけど、それだと範囲が広すぎてまとまらない予感がしたので今回は風邪とインフルエンザに絞ります。
 ちなみに、前述のGoogleの解析によるとこのブログの読者数は週30人くらいみたいです。小学校の壁紙新聞程度の影響力はあるかな…

風邪の感染経路

 風邪は一般的に、咳や鼻水と言った症状を引き起こす病原体(ウイルス・細菌)が人に感染することで起こります。感染するためには病原体が感染部位まで運ばれる必要があり、つまりこの経路さえ遮断してしまえば風邪は引かないということです。風邪の感染経路は主に以下の2種類と言われています。

1.飛沫感染:病原体が含まれた鼻汁・唾液が咳やくしゃみで飛び散り、その飛沫を直接吸引することで病原体が鼻やのどに到達する経路。
2.接触感染:ドアノブや机などに付着している病原体が手に付着し、その手で口や鼻に触った際に病原体が到達する経路。

細かいことを言えばその他の経路もありますが(さらに言えば上記2つも仮説の段階で確定的な話ではないのですが)、対策が必要なのはこの2経路と思っていただいて大丈夫です。

感染経路の遮断法

 ではどうやって遮断するのかという話ですが。最も効果的かつ科学的に実証されている方法は、手洗いです。いくつかの研究が行われていますが、よく手を洗う人たちとそうでない人たちを比較した場合、手洗いする人のほうが風邪にかかる率が40〜50%程度低下するとされています。リスクが半減するのはなかなかの効果ですね。ちなみに手洗いに使用するのは通常の石鹸で十分で、殺菌成分を含んだいわゆる薬用石鹸は効果に差がないとされています。いつ手を洗えばいいかということに関しては明確なデータはないようですが、顔をてで触る前、汚染されているリスクがあるものに触れた後は手を洗ったほうが良いと思われます。具体的には食事前やドアノブ・手すりを触れた後などですね。頻繁に手を洗うのが負担である場合は、アルコールによる察式消毒も同等の効果があるとされています。ただしノロウイルスを始めとする一部のウイルスに対してや、手の汚染がひどい場合は効果がないことには注意が必要です。
 飛沫に対する対策はどうでしょうか。日本人はマスクが好きで、冬になると着用している人が多いですが、実はマスクが風邪を予防できるかどうかははっきりとしていません。むしろ否定的なデータが多いです。原因としてはいろいろ考えられるのですが、一番大きなのは「マスクを正しく使用できる人がほとんどいない」ことではないかと言われています。飛沫が鼻や口に付着するのを防ぐには、マスクと顔面に隙間ができてはいけませんが、四隅がぴっちりとくっついた状態で長時間マスクを着用するのは負担が大きく、大抵の人がどこかに隙間がある状態でマスクを使用しています。加えてマスクの表面はウイルスがびっしりくっついている状態なので絶対に触ってはいけないのですが、大多数の人たちが無意識にマスクを触ってしまっており、予防効果がなくなってしまっていると考えられています。つまり、「隙間なくピッチリとしたマスクを使用し、決して布面をさわらず、外す時はゴムの部分を持ってすぐにゴミ箱に捨てる」という使い方をすれば効果があるかもしれません。実行するのはかなり難しいと思いますが。ちなみにこれは予防の話であって、今現在風邪を引いている人がマスクを付けることは、飛沫の拡散を予防することになるので効果があるとされており、積極的に推奨されています。
 うがいに関してもデータは限られています。そもそものどをうがいする習慣がアジア圏にしかないので(西洋では鼻うがいが主流、らしい)、検証する人が少ないということもありますが。一応日本で行った研究では、うがいを行う人たちのほうが風邪にかかるリスクが30%くらい低いというデータがあるそうです。別の研究では福岡県の幼稚園児を対象として実験を行い、水のうがいで発熱疾患にかかるリスクが30%減、緑茶のうがいでリスクが60%減であったとの結果があります。割と良さそうなデータではありますが、あまり差がなかったとする研究もあるようです。標準的な方法や回数も不明だったりと、うがいに関してはまだまだ積極的にお勧めする段階ではなさそうです。
 さらに根本的に経路を遮断する方法として、人混みを避けるというものがあります。CDCのサイトには風邪予防のトップに書いてある方法です。まあ、それはそうなんですけどね。

経路遮断以外の対策

 経路遮断以外にも、風邪の予防法は巷に溢れています。有名なところではビタミンCの摂取がありますね。これに関しては多数の研究がなされていますが、今までのところ劇的な効果を示した研究は存在しません。激しい運動をするアスリートや軍の兵士などでは少し効果があるかな?程度で、一般人ではサプリをいくらとっても風邪の予防にはならないのではないかとされています。適度な運動と栄養、休養が免疫力を高めるというデータはありますが、直接的に風邪を予防するかどうかを検討した研究はなさそうでした。まあ、少なくとも悪さはしないんじゃないかと思います。

まとめ

 以上まとめますと、「風邪の予防にはまずしっかり手洗い。適度な運動と栄養・休養をとって、人混みを避け正しい方法でマスクを着用し時々うがいする」ということになります。…長々と書きましたがなんの新鮮味もない結論ですね。逆に言えば、テレビでやるような「驚愕!あの身近な食べ物に驚きの効果が!」なんて言うようなものは科学的根拠が薄弱か全く無いようなものが殆どで、信頼するに足りないということです。
 そろそろ暖かくなる頃ですが、皆様も体調を崩さないようお気をつけください。