インフルエンザのお薬

お知らせにも掲載しましたが、鳥取市内でもインフルエンザが散発的に流行しているようです。まだ本格的な流行ではありませんが、健康管理には十分お気をつけ下さい。

 

さて今回は、たまには医療に関係した内容を、ということでインフルエンザの治療薬のお話をしようと思います。

私が研修医の頃はインフルエンザの薬といえばタミフル一択だったのですが、次々と新薬が発売され、昨シーズンからはゾフルーザが加わり現在では5種類にもなっています。効果はどれも同じなのですが、それぞれ特徴があり自分にあったお薬を選ぶことが重要になります。本来は医師のの説明を受けた上で患者さん本人が薬を選択するのが原則ですが、インフルエンザの流行期にごったがえす外来で、ゆっくり説明を聞くはもなかなか難しいもの。結局医者任せになる人がほとんどではないでしょうか。今回の記事を読んで実際処方を受けるときの参考にしていただければ幸いです。

インフルエンザ治療薬の種類

現在日本で処方できる治療薬は、「タミフル」「リレンザ」「イナビル」「ゾフルーザ」「ラピアクタ」の5種類になります。

インフルエンザ治療薬の効果

5種類の薬全てでほぼ同じです。インフルエンザの症状出現から48時間以内に投与開始すれば、発熱期間を24時間程度短縮するとされています。重症化の予防や合併症の予防ができるかどうかはまだはっきりと分かっていません(賛否両論あります)。

インフルエンザ治療薬の適応(どのような人が使うべきか)

乳幼児や高齢者、呼吸器疾患の持病のある人、免疫に影響を与える基礎疾患を持っている人は重症化のリスクが高いため使用が勧められています。それ以外の方でも、症状緩和の観点から医師が必要と判断すれば投与されますが、基本的に自然治癒する疾患ですので使わなければ治らないというものでもありません。

治療薬の分類・投与方法

・内服薬(飲み薬):「タミフル」「ゾフルーザ」

・吸入薬(吸う薬):「リレンザ」「イナビル」

・点滴薬     :「ラピアクタ」

治療薬の分類・投与期間

・5日間(10回)投与:「タミフル」「リレンザ」

・1日間( 1回)投与:「ゾフルーザ」「イナビル」「ラピアクタ」

タミフルの特徴・メリット・デメリット

現在使用されているインフルエンザ治療薬としては最も古いものになります。以前は10代に使用すると異常行動の副作用が出現する恐れがあるとのことで10代の患者には使用できませんでしたが、科学的に否定されたため今シーズンより全年齢の患者で使用できるようになりました。5日間使用する内服薬です。

・メリット:生後2週間から使用でき、年齢制限がない。飲み薬なので特別な説明や技術が必要ない。

・デメリット:全部で10回の内服が必要で、飲み薬が苦手な子どもには使いにくい。否定されたとはいえ副作用のマイナスイメージが強い。

リレンザの特徴・メリット・デメリット

専用のデバイスを用いて5日間使用する吸入薬です。年齢制限はないのですが、上手に吸入できないと使用できないので中学生くらいにならないと処方できないことが多いです。

・メリット:吸入なので内服が苦手でも使用できる。今まで耐性ウイルスがほとんど報告されていない。

・デメリット:人によっては吸入がめんどくさい。上手にできないと吸っているつもりでも効果が出ないことがある。重篤な喘息患者、呼吸器症状が強い患者には使えない。

イナビルの特徴・メリット・デメリット

専用のデバイスを用いて1回使用する吸入薬です。リレンザと同様、ある程度年長にならないと使用できません。

メリット:リレンザのメリットに加え、1回で治療が終わるので手間がかからない。

デメリット:リレンザのデメリットに加え、治療が1回きりなので1回失敗すると効果が全く出ない(リレンザは10回吸入があるので1回失敗しても影響が少ない)。

ゾフルーザの特徴・メリット・デメリット

今年のはじめに鳴り物入りで登場した新規のインフルエンザ治療薬です。今までの薬とは全く異なる作用機序を持ちますが、効果はほぼ同じと言われています。発売以降あっという間にインフルエンザ治療薬のシェアトップになったとか。1回使用する内服薬です。

メリット:1回内服なので手間がかからない。イナビルのように使用に失敗するリスクもない。解熱までの時間は他の薬と同様だが、排出されるウイルス量は早期から低下するので人に移しにくくなる可能性がある(実証はされていません)。

デメリット:現時点では錠剤しかないので小児には使用しにくい(来年には粉薬もでるそうです)。新しい薬なので安全性にやや不安あり。体重が10kg以上ないと使用できない。

ラピアクタの特徴・メリット・デメリット

現状唯一の点滴1回投与するインフルエンザ治療薬です。基本的に入院治療が必要な人や、意識がないほどの重症患者がメインターゲットなのでうちのようなクリニックで使用することはまれですが、一応情報を載せておきます。

メリット:点滴するので確実に投与が可能。薬が苦手とか呼吸器症状とか関係なし。

デメリット:点滴確保が必要。点滴だとよく効く気がするが実は効果は他の薬とほぼ同じ。

以上を踏まえた上で、どのお薬を使うのか

で、結局どのお薬がいいの?ということですが。いろいろな意見があるとは思いますが、個人的な意見として、

小学生以下の小児:タミフル

中学生〜高校生くらいより年長で治療は1回きりが良い人:ゾフルーザ・イナビル

中学生〜高校生くらいより年長で確実な効果が欲しい人:タミフル・リレンザ

基礎疾患のある人:タミフル

入院患者:タミフル・ラピアクタ

という感じでしょうか。内服薬と吸入薬は完全に個人の好みなので、呼吸器疾患をお持ちでなければどちらでもよいかと。ゾフルーザも良いお薬とは思いますが、保守的な小児科医としては今シーズンは様子を見たい気がします。

以上、参考になりましたでしょうか。今回は治療薬の話をしましたが、インフルエンザは予防が第一です。うがいと手洗いをしっかり行い、可能な限りワクチン接種を行ってなるべく罹らないように注意して下さい。